日本では、冬季にトイレで発作を起こす人がかなりいます。特に高血圧の人はトイレの環境改善を行うのが得策です。高血圧・トイレでの注意点について紹介していきます。
冬場のトイレは要注意高血圧の人が、入浴と同様に気をつけたいのが、トイレでの動作です。日本では、血管が収縮しやすい寒い冬に、トイレで脳卒中や心臓発作で倒れる人が多くなります。この現象は、欧米ではあまり見られず、トイレが寒くなりがちな日本家屋の構造や、和式トイレでのしゃがむ動作が関係していると考えられます。暖房がきいた部屋から寒い廊下やトイレに行くと、急な冷気によって血圧が上がります。排泄のために下半身を冷気にさらすと、血圧はさらに上がり、その変動が大きいと、発作のリスクが生まれます。寒い時期には、トイレも暖めておき、トイレに立つときは、厚めの上着などをはおり、急な寒冷刺激から体を守りましょう。
いきみによる血圧上昇
排便時のいきみ動作は、健康な人でも40~50mmHgほどの血圧が上昇します。高血圧の人は、変動幅がより大きくなる場合が多いので注意しましょう。
高齢者はとくに注意を!
排便時、いきむ動作を中断して、大きく息を吸うと、上述のように、血圧が下がります。このとき、さらなる血圧低下を防ぐために、末梢血管が収縮して、血圧を上げるよう働きますが、高齢者になると、この血管反射が鈍くなってきます。その場合、血圧はどんどん下がり続け、脳卒中や心筋梗塞の発作が起こりやすくなります。高齢の人は特に注意が必要です。
いきみは血圧変動のもと
便秘や硬めの便も発作のリスクに
また、和式トイレの姿勢でしゃがみこむと、腹圧が高くなり、血圧が上がります。そこで排便のためにいきみ始めると、肺内の血液がいっせいに心臓に流れ、血圧が急上昇します。いきむ動作を続けていると、胸腔内の圧力によって肺に戻る血液が少なくなり、心臓の血液量も少なくなるため、血圧が下がってきます。ここで、いきみを中止して息を大きく吸うと、肺に血液が流れ出して、そこで一時とどまるため、心臓に流れる血液がさらに減り、血圧もさらに下がります。そのあと、血流は回復しますが、血圧低下を防ぐために末梢血管が収縮したままなので、いきむ前より、血圧は少し高めとなります。このように、トイレでのいきみ動作も、血圧に大きな変動を招きます。いきまなくても排便できるように、スムーズな便通を整えることや、トイレでの動作をゆっくり行うことが重要です。
トイレで発作を起こさない為に
血圧の急変動を起こさない為にトイレ環境と、排泄の方法を知っておきましよう。
冬季のトイレ
冬季のトイレを暖める
居室と廊下・トイレの温度差があまりない暖房方法が理想的ですが、家の構造によって困難な部分もあるので、寒い時期はトイレにも暖房を入れましょう。近年は、トイレ用暖房機もいろいろと販売されています。
洋式トイレに変更
和式から洋式トイレに変更
便座スタイルは、腹圧が少なくてすむ洋式トイレがベストです。和式から洋式への変更は、リフォーム工事なしで、洋式便座をかぶせるだけでも行えます。
便秘に注意
便秘にならないよう注意
強くいきむ動作を避けるため、便秘に注意しましょう。食物繊維が豊富な野菜、海藻類を多く食べて、適度な運動を心がけましよう。毎日、決まった時間に排便する習慣をつけるのも大事です。⇒【
夜中のトイレ
夜中のトイレは…
冬場の夜中のトイレは、寒冷刺激に加えて、寝た状態から起き上がる動作も加わるので、より危険が増します。夜中にトイレに立つときは、必ずガウンなど上着をはおってから向かいましよう。高血圧で高齢者の人は、寝室にポータブルトイレを用意し、夜中はそちらで用を足すのもいいでしよう。
「排尿失神」
排尿を我慢すると「排尿失神」を起こす危険があります
排便のいきみ動作に加え、排尿時にも血圧の変動が起こります。特に男性は、膀胱壁を張りつめることで、女性以上に尿意を我慢できますが、これは危険です。排尿を我慢していると血圧が上がり、その後、一気に排尿すると、急激に血圧が下がります。高血圧の人では、排尿後に気を失う「排尿失神」を起こす場合もあります。尿意は無理に我慢せずにトイレに行きましよう。排尿失神が起こりやすいのは、とくに夜中なので、就寝前は、血液を濃縮させないための水をコップ1杯飲むのに控えて、大量の水分摂取は避けましょう。また、就寝中に体が冷えると、尿意が起こりやすいので、寝具を暖かくすることも大事です。